とうとう

17時。公休日の連中も「ミーティング」という名目で呼び出す。社員を集めた、社長からの説明だ。
「今日は、みなさんに悪いお話をしなければなりません。」
「2月27日で株式会社○ー○○○は破産することに、なりました。破産というのは、この会社が、なくなるということです。」
 〜今後の流れ等〜
形式ばった一通りの説明を終えた上で、若干体勢を崩し、大きくため息をついた。
「申し訳ない。」ことばは涙でつまっていた。各社員ひとりずつに声をかけ、回想にひたった。各所からはすすり泣く声が聞こえた。
自然と涙が出た。1週間も前から、この事実を伝えられていたにもかかわらず、やはり耐えることはできなかった。
その場にいた全員がいろんな涙を流した。つられ涙、悲しい涙、たぶん一番多くはくやし涙だろう。KMチェーン倒産、○ー○○K○ー○○ャ○ンの倒産、周囲の連鎖倒産とみなされる幕切れに最後まで踏ん張った自負がある。
周囲からは、依然とした○○み○みの生き残りとみられ、しがらみから逃げ切れないとみられ、相当な偏見の中で生きてきた。事実は、そんな不透明なカネの流れも一切なく、完全独立採算を保ってきた。

18時。営業を引き継ぐ会社の社長が来た。うちの社長とはお別れだ。この瞬間に気持ちを切り替えとと言われても、我々は機械じゃない。そんな簡単に切り替われるヤツなんていない。
新会社側からは簡単な説明だけで終わった。詳しいことは後ほど。だそうだ。あたりまえだ。聞き入れる余裕など、ない。

引継ぎのための、棚卸を全社員で行う。
自分は雑給の計算準備に入る。おそらく徹夜だろう。覚悟の上、寝袋も持参している。
いろんな計算業務と平行し、製品ラベルの表記も一斉に書き換える。この点は、システム化されていてそんなに大変ではない。ただ、明日から突然、違う会社のラベルになるのは、なんとも悲しい限りだ・・・。